あれ?あそこにいるのは、元大魔神の佐々木さん。あんな有名人がなぜ競馬場に?
・・・おいおい、どうした、どうした。『私が最も尊敬するのは、総理大臣でもスポーツ選手でもお父さんでもない。馬主ピンバッチを付けたおじさんです』競馬の伝道師ODINです。
ああ、ODINさん。元大魔神の佐々木主浩さんを見かけまして。さすがVIPですね。多くの競馬場スタッフの方に案内されてましたよ。
佐々木主浩さんは、数多くの競走馬を所有する馬主だからな。きっと、馬主席で観戦しに来たのだろう。そして、私に言わせれば、佐々木さんは今だって大魔神だ。
そうなんですね。私も競馬が分かってきたし、このままいけば、いつか馬主になれるかなぁ。
・・・相変わらずのうぬぼれっぷりだな。まだまだ覚えなきゃいけないことは山ほどあるし、そもそも競馬の知識があるだけでは、馬主にはなれない。
うぬぼれって、呼んでもないのに毎回やってくるあなたに言われたくありません。じゃあ、どうすれば馬主になれるのか、教えてください。
・・・良いだろう。では今回は、馬主の役割や条件について解説しよう。
馬主(ばぬし・うまぬし)とは
馬主とは、競走馬を所有している人・法人・組合のことを指します。日本の競馬では、中央競馬、地方競馬それぞれの馬主登録が必要です。
馬主の種類
個人馬主
個人を馬主として登録するものであり、馬主全体の約85%を占める最も一般的な登録形態です。現在ほとんどの馬主の方が、個人馬主から馬主ライフをスタートしています。
組合馬主
3名以上10名以下の組合員がそれぞれ出資し、共同で馬主活動を行うものです。個人馬主と比較して、組合員各々に必要な所得要件が低いというメリットがあり、仲間内で馬主活動をされたい方に最適の形態です。
法人馬主
競馬事業を目的とする法人を馬主登録するものです。その代表者が個人馬主としての登録要件を満たす必要があるとともに、法人の財務内容等も審査の対象となります。また、法人馬主の代表者は、個人馬主として一定の活動経験を積んだ方でなければなりません。
中央競馬の馬主になるための要件
個人馬主の要件
- 過去2年間以上、所得金額(※1)が年間1,700万円以上あること
- 資産(※2)が7,500万円以上ある人
- 調教師、騎手、調教助手、騎手候補者、厩務員、JRA職員など、競馬関係者ではない人
※1…所得金額は、個人であれば収入から社会保険や住民税等、国税・地方税を引いた金額。個人事業主であれば収入から国税・地方税と必要経費類を引いた金額です。
※2…資産は、本人名義の不動産、預貯金、有価証券(投資信託、債券等を含む)です。負債がある場合は資産額からその分を差し引いて評価されます。
組合馬主の要件
- 組合員数が、3名以上10名以下であること
- 組合員全員の所得金額が、過去2年間以上年間900万円以上あること
- 組合財産として、1,000万円以上の預貯金があること
- 組合員のうちに、個人馬主・法人馬主の代表者又は他の組合馬主の組合員が含まれていないこと
法人馬主の要件
- 資本金または出資の額が1,000万円以上であること
- 代表者が個人馬主の要件を満たしていること
馬主の役割
競走馬の購入
競走馬は、0~2歳にかけて、競り市でのセリか、生産牧場との直接取引(庭先取引)にて購入します。価格は血統によって決まり、昨年(2020年)の競り市での成約実績は以下の通りです。
上場頭数 | 226頭(牡142頭、牝84頭) |
落札頭数 | 203頭(牡131頭、牝72頭) |
売却率 | 89.8%(牡92.3%、牝85.7%) |
平均価格 | 41,049,261円(税別) |
中間価格 | 29,000,000円(税別) |
最高価格 | 380,000,000円(税別) |
競走馬の預託・入厩
調教師と競走馬の預託契約を結び、JRAの指定する厩舎(きゅうしゃ)やトレーニングセンターへ預けます。これを入厩(にゅうきゅう)と言います。調教師は、レースに向けて競走馬の育成管理を行います。
競走馬・馬名・服色の登録
JRAのレースに出走させるためには、JRAの競走馬登録および馬名の登録が必要です。
合わせて、レースで騎手が着用する服(勝負服)を、決められた色・模様の中から選び、登録します。なお、勝負服は、中央競馬は馬主によって決まりますが、地方競馬は騎手によって決まります。
馬主の10の特権
中央競馬の馬主には、様々な特典があります。
- 各競馬場にある馬主専用観戦席の利用
- 各競馬場にある馬主専用駐車場の利用
- 競馬場への入場無料
- 競走馬の馬名、勝負服の決定権
- 愛馬出走時のパドック馬主エリアへの入場
- ウイナーズサークル(表彰式などを行うブース)での記念写真
- 厩舎・トレーニングセンターへの入場
- 厩舎・トレーニングセンター内の宿泊施設の利用
- JRAの主催するパーティ、イベントへの参加
- 馬主協会の入会
馬主の収入と支出
馬主の収入は、競走馬のレース賞金
競走馬のレース賞金は、「①本賞(1着~5着が得られる賞金)」、「②出走奨励金(6着~8着)が得られる賞金」、「特別出走手当(全ての出走馬が得られる手当)」の3つです。そのうち、①と②の80%、③の100%が馬主の収入となります。
なお、現役時代の成績が良く、引退後に種牡馬(しゅぼば)や繁殖牝馬(はんしょくひんば)として活躍できれば、セカンドキャリアとしての収入が得られます。
馬主の支出は、競走馬の購入費用と預託料
最初に競り市や庭先取引による競走馬の購入費用がかかります。預託料は、競走馬の飼料代、飼育・調教等にかかる費用です。競走馬を購入してから発生する費用となり、預ける厩舎によって異なります(1頭1か月60~70万円程度)。
馬主の収支は、競走馬の成績次第
2018年にJRAから馬主に賞金等として支払われた額は約809億円、同年にJRAで出走した馬は11,197頭でした。平均すると、1頭の年間収入は約723万円となります。
例えば、1歳から入厩した馬が8歳で現役を引退した場合を試算すると以下の通りです。
収入 | 5,061万円 | 現役生活の2歳~8歳の7年間、年間723万円の賞金収入を得た場合 |
支出 | 6,760万円 | 購入費用に1,000万円、預託費用に入厩した1歳~8歳の8年間、年間720万円がかかった場合 |
収支 | -1,699万円 | 収支率:-33.6% |
収入、支出共に平均値を取ったかなりアバウトな計算ですが、投資商材としてはかなり難しい設計と言われています。馬主とは、「競馬への特別な愛情」がなければ、務まらないのかもしれません。
日本の競馬の著名な馬主
中央競馬・地方競馬における著名人の馬主をご紹介します。(2020年3月現在)
馬主って、お金持ちじゃないとなれないことがよく分かりました。私たち庶民には、夢のまた夢かなぁ。
・・・まぁそうだな。資産要件もあるし、初期投資も維持費もかかる。そして、平均以上に勝てる馬を所有しない限り、黒字化するのは難しいだろう。だからこそ、馬主で成功している人は、社会的なステータスを得ることができるのだ。
しかし、庶民でも馬主になれる方法がある。何か分かるかな?
あー、分かりました!「ダービースタリオン」ですね?
・・・ゲームじゃなくてリアルな話だ。一つは「地方競馬の馬主」だ。競走馬の購入費や維持費はさほど変わらないが、馬主になる資産要件がぐんと下がる。もう一つは・・・。
分かりました!「ウイニングポスト」ですね?
・・・だからゲームじゃない!もう一つは「一口馬主」だ。馬主の特権がほとんどなくなるが、40人から500人でお金を出し合って競走馬の管理を行い、レースの賞金を分け合うシステムだ。さらに言えばもう一つ・・・。
今度こそ分かりました!「ギャロップレーサー」だ!
・・・ゲームから離れろ!というか、そんなに競馬ゲームを知ってるのおかしいだろ!最後の一つは、「POG」だ。デビュー前の競走馬を10頭選択して、その後の成績を競うシステムだ。上位入賞者には、主催団体から商品や賞金が出る。「ペーパー・オーナー・ゲーム」の略で、馬主の目利き力を競うゲームだ。ん?ゲームか。
・・・ゲームじゃねーか!おばか!