解説の人が「調教の数字が良い」って言ってたけど、レース本番に向けて、準備がうまくいったということかな?
・・・おいおい、ちょっとまて、ちょっとまて。『調教と検索すると、予想以上にSMの話が出てくるから注意してね』競馬の伝道師ODINです。
ODINさん、前回は調教師の解説をしてもらいましたが、調教って、一体いつどこで何をやってるんでしょう?
レースが本番なら、調教はリハーサルのようなものだな。調教師のことを覚えた君には、すぐ理解できるはずだ。では、今回は、中央競馬の調教の5W1Hについて解説しよう。
・・・5W1H?調教の5W1H・・・。wwwwwのあとh。ははぁ、大爆笑ってことですか?
・・・知らんのか。こっちが爆笑だぞ。5W1Hとは、 Why(なぜ) 、 Who(だれが)、 When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、How(どうやって)の略で、コミュニケーションの基本だ。
・・・なるほど。それは恥ずかしいことをしました。全然笑えませんでしたね。では、中央競馬の調教の解説をお願いします。
調教はなぜやるの?
調教の目的は、「競走馬のスピードとスタミナを鍛えること」と「競走馬のコンディションとモチベーションを向上させること」です。出走するレース当日に、心身ともに最高の状態で臨めるように、様々なプログラムを組み合わせて実施します。
競走馬の資質や適性を見極めて、馬の能力を最大限引き延ばすには、馬の育成に関する知識と経験が必要不可欠であり、調教師の力量によって、その成果は大きく変わります。
調教はいつ行うの?
調教は、調教師の指示の下で、日々行われています。ちょっとしたエクササイズから、とってもハードな坂道ダッシュまで内容は様々ですが、タイムが記録される調教は、おおよそ3~4日に1回です。
特にレース当週の水曜日~木曜日に実施される調教が、レース時の気力や体調を最も正確に表すため、重要視されています。
なお、レースの2~3日前に行う最後の調教を「追い切り」と言います。
調教は誰がやるの?
調教のメニューは、馬の能力やコンディションを見て、調教師が作成します。
実際に馬に騎乗して調教を行うのは、JRAに登録している騎手、調教師、調教助手のいずれかです。誰が騎乗しても、調教の効果はさほど変わりませんが、騎乗した人間の体重によって、調教のタイムは大きく変わります。
騎手は体重制限があり、大体50kg前後ですが、調教師や調教助手は体重制限がないため、その限りではありません。したがって、調教師や調教助手が騎乗した調教の場合、馬本来の実力よりも遅いタイムが出る場合がありますので、注意が必要です。
調教はどこで行うの?
調教を行う場所
中央競馬の調教は、美穂・栗東のトレーニングセンター、競馬場、生産・育成牧場の3つで行われます。ほとんどが、所属する厩舎(きゅうしゃ)のあるトレーニングセンターで行われます。
調教を行うコース
調教を行うコースには様々な種類があります。調教の目的によって、使い分けられます。
コース名 | 内容 | 特徴 |
芝コース | 競馬場とほぼ同じ芝生のコースです。 | 馬を鍛えることよりも、芝コースに慣れさせることを目的にしており、使用頻度が最も低いコースです。 |
ダートコース | 競馬場のとほぼ同じ砂のコースです。 | 天候や気候により、馬場状態が大きく変化します。馬場状態の悪いコースに慣れさせる目的で使用します。 |
ウッドチップコース | 木片や木くずを敷き詰めて舗装したコースです。 | クッション性と排水性に優れており、馬場状態が変化しにくいコースです。そのため、調教の際の脚力負担を和らげて、スピードとスタミナを鍛えることができます。調教で最も人気のあるコースです。 |
ニューポリトラックコース | 電線の廃材や合成ゴムの破片などを混合して舗装したコースです。 | クッション性が高く、砂埃の発生が少なく、水はけが良いというメリットがあり、馬場状態が最も変化しにくいコースです。「オールウェザーコース」とも言います。ウッドチップコースより更に脚力負担を抑えて調教することができます。 |
坂路コース | 高低差15~30メートルの坂道のコースです。ウッドチップで舗装されています。 | 最もハードな調教コースで、最もスピードとスタミナを鍛えることができます。なお、坂路の調教タイムは、ICチップを用いて計測されて公開されています。 |
スイミングプール | 競走馬用のプールです。ドーナッツ型と直線の2タイプがあります。 | 心肺機能の向上やストレス解消、故障馬のリハビリテーションとして使用されます。水中に歩行訓練装置を設置したコースを「ウォータートレッドミル」と言い、通常のプールよりも、脚部負担を和らげながら鍛えることができます。 |
森林馬道 | 森林浴ができる散歩道です。美穂トレセンにしかありません。 | ストレス解消、モチベーション向上を目的にした散歩道です。 |
調教は何をするの?
調教方法は、人間が一人騎乗して、決められたコースを走ることです。ただし、馬の走り方には、様々な違いがあります。
走る距離
調教時は、走るコースは決まっていても、走る距離は決まっていません。馬の調子に合わせて、騎手の手さばきで適当に距離を決めています。
走り方(単走と併せ馬の違い)
調教時の走り方は、1頭が単独で走る「単走」と、2頭以上の馬が並んで走る「併せ馬」があります。「併せ馬」の方が、競走馬の闘争本能を引き出し、馬同士が競い合うため、速いタイムが出やすい傾向にあります。なお、大きな差が付かないよう、能力的に上位の馬、あるいは好調の馬が外側を走ります。
走る度合い(脚いろ)
馬の走る度合い(調教の具合)を、「脚(あし)いろ」と言います。脚いろは、調教師や騎乗者、あるいは取材した記者の主観で決められており、基本は「馬なり」「強め」「一杯」の順で、ハードになっていきます。
なお、競馬新聞によっては、「ゴール前だけ全力で走る(G前仕掛け)」や「全力で走ったが最後でバテた(叩一杯バテ)」など、脚いろをより細かく表現している場合もあります。
走るタイム(調教時計・追切時計)
調教時のタイムを「調教時計」、レース前に行う最後の調教時計を「追切時計」と言います。競走馬の能力やコンディションを計る最も重要な指標です。
調教では、レースのようにスタート位置が明確に定めらていないため、ゴールの位置を決めて、そこから逆算した距離でタイムを測定しています。一般的には、ゴール手前の1ハロン(200m)、2ハロン(400m)、3ハロン(600m)、4ハロン(800m)、5ハロン(1000m)のタイムが記録されます。
走行距離は、馬が本走に入った(本気を出した)タイミングやコーナーを通過した際のポジションによって変わるため、測定不能です。
なお、調教時計で最も重要視されるのは、ラスト1ハロン(200m)の数字で、トップクラスの馬は11秒台で走ります。
調教情報はどうやって入手するの?
調教情報は、競馬新聞や競馬情報サイト、競馬アプリで入手することが可能です。競馬新聞の調教欄の読み方は、以下をご参照ください。
ODINさん。今ググってみたところ、最近は「5W1H」じゃなくて、「5W2H」らしいですよ。もう一つのHは何か知ってますか?
・・・まじか。私の時代にはなかったな。
もう一つは、「How much(いくら)」です。つまりコストですね。調教のお値段はいかほどでしょう?
・・・なるほど。上述した通り、調教情報は、競馬新聞や競馬サイト、競馬アプリで入手できるが、いずれも有料だ。情報収集に取材のコストがかかるためだが、それだけの価値があることは間違いない。
確かにリハーサルで失敗している演者が、本番で成功するわけないですもんね。これからの競馬予想に、しっかりと活用していきたいと思います。